2013年 10月 05日
南アルプス 甲斐駒ケ嶽~鳳凰三山縦走 |
9月最後の土日に、夏休み最後の1日+7月の休日出勤振り替え1日をプラスして4連休を取得。
ずっと行ってみたかった南アルプス 甲斐駒ヶ嶽へ行ってきました。
甲斐駒へ登るルートとしては北沢峠から駒津峰を経由して行くのが現在最もポピュラーなのだけど、今回は古くからの信仰登山の道である「黒戸尾根コース」を選択。
黒戸尾根は「日本三大急登」の一つと言われ、登り口の竹宇駒ケ嶽神社から甲斐駒の頂上まで標高差2,300m。
噂によると相当キツイらしいので荷物は極力軽量化したいところではありますが、テント場の様子がよくわからない&高山での風対策を考慮し軽量900グラムのルナーソロ(ワンポール・シングルウォールテント)ではなく約2kgのダンロップVS20(ダブルウォールテント)を選択。
さらに小屋でビールを買えなかった場合を想定しワインを1L携行。3泊4日分の食料とあいまって荷物はズッシリ20kg強のライトヘビー級。
だいじょうぶか?俺・・・。
と若干の不安を抱えつつ4時44分地元駅発の電車に乗り、中央線長坂駅からタクシーで30分、登山口の尾白川渓谷駐車場に到着したのは8時半過ぎ。はるばる来たもんだ。
というわけで早速登り始めましょう。
まずは登り口に鎮座まします竹宇駒ケ嶽神社に参拝。
神社脇の尾白川渓谷にかかる吊橋を渡るといよいよ日本三大急登・黒戸尾根が始まる。
と言っても斜度はそれほど激しくキツイわけではなく、まあ普通なんだけど、それを延々2,300mも登り続けるのかと思うと愕然とするという感じ。
しばらく土の道を登り続け、視界がパっと開けたところが名所(?)“刃渡り”。
切り立った岩尾根で見た目は怖いけど、しっかり鎖の手摺が設置してあるので思いのほか危険度は低い。でも強風+雨だったらかなりヤバそうではあります。
刃渡りからしばらく急な斜面を登ると“刀利天狗”。
このあたりから道の脇に「~神」「~仏」と刻んだ大小の石碑が連綿と現れるようになる。
それらの裏には、古くは江戸時代から新しくは平成まで、様々な年号が刻まれており、いかに駒ケ嶽が古くから信仰の対象として尊崇を集めていたかがヒシヒシと伝わり、次第に厳粛な気分になってくる。
一度、足がもつれて転んだとき、高さ60cmほどの小さな石碑を倒してしまったのだけど、これを元に戻すのが汗をかくほど大変、すなわち「めちゃくちゃ重い」のである。ザックの重量なんて足元にも及ばないほどの重さの石を背負ってこの山道を登ってきた昔の人ってスゲーなー、と素直に感心する。
五合目を過ぎるといよいよ黒戸尾根の核心部、垂直のハシゴと鎖場が交互に現れる難所に突入。
ハシゴも鎖もしっかりしているのでそれほど怖くは無いけれど、20kgザックを背負って登るのはキツイ。
一気に息が上がり汗が吹き出し、持続する緊張感に写真を撮る余裕無し。
ようやく最後の橋を渡ると七丈小屋に到着。テン場が混んでいるようなので休むヒマなくテン場へ直行、最後に一箇所だけあった空きスペースにテントを設営。
いやー危ない。あともう少し遅く着いてたら張れなかったよ(*実はこのテン場の真上に第二テン場あり、そっちは空いていましたが展望がイマイチ)。
テントを張ったら後はゆっくり寛ぐのみ。
ビール、ワインと飲み進むうちにガスが晴れ、鳳凰三山がこんにちは。
明後日にはあそこまでたどり着けるかな~?などと景色を見ていると、あちjこちのテントから這い出してきた人たちが同じように感心しながら景色鑑賞を開始。
本日のテン場に集った人たちはソロが多く、皆静かで落ち着いた人ばかりでとても良い感じ。いつもこんな感じだといいなあ。
陽が落ちると甲府方面の夜景がとても綺麗で、テントの扉を空けて眺めつつ、ヘッドランプの灯りで読書をしつつワインを飲む。至福のうちに19時頃就寝。
翌朝は2時過ぎに起床。
さすがに寒いけど、外に出ると満点の星と、美しい三日月。最近山ではいつも悪天候だったので、久々の美しい夜空に感動しつつ朝飯食ってテント畳んで4時半過ぎに出発。
昔の信仰登山者がご来光を拝むための場所である「八合目御来迎場」に5時半前に到着すると、ご来光を待つ人が10人ほど。荷物を下ろして一緒に待ちます。
待つこと約15分、5時40分頃に東の空からご来光。
厳粛。荘厳。壮麗。
ごく自然に「神」を感じる瞬間です。ひとしきり撮影し、拍手を打って本日の無事を祈願して出発!
と思いきや、ここで強烈な「自然の欲求(大きいほう)」が波状的に襲来。
え~、さっき小屋のトイレでしっかり出してきたばかりなのに~(悲)。
仕方無い。普通ならちょっと脇に入って穴掘って・・・という局面だけど、この山でそれをする気にはなれず、空荷で一旦小屋まで下る。
小屋のトイレで用を足し、トンボ返りで再び御来迎場まで登ってちょうど1時間でスッキリ再出発。
ここから頂上まで1時間ちょっと、確実な3点確保必須の岩登りが続く。
二本の鉄剣がそそり立つ岩峰。
頂上直下より西峰頂上を望む。
まずは東峰に、着いたどー!
東峰から5分ほどで最高点の西峰に、着いたどー!
感動である。黒戸尾根最高!甲斐駒最高!
ひとしきり広い山頂を周遊。しかしまだまだ先は長い。15分ほどで出発、仙水峠に向けて下る。
途中、駒津峰のピークへ一旦登り返し、頂上でしばし休憩。
このあたりは北沢峠からの日帰り登山者がほとんどで、大荷物背負って反対側からやってくる私が珍しいらしく、あちこちから質問を受ける。
「黒戸尾根から来たの?」
「そうです!(ちょっと得意気)」
「その荷物背負って?」
「そうです!(かなり得意気)」
「すごいですねー。」
「いやー、それほどでも!(もっと言って!)」
的な会話を何度も繰り返し、テンション上昇。アホですな。
駒津峰から仙水峠までは膝が笑うほどの急な下り。更に、ジリジリ照り付ける太陽に炙られ、峠に降り立った頃にはかなり消耗気味。
そして目の前には早川尾根への最初の関門である栗沢山が凶悪な斜度と比高を見せ付けるようにそそり立っていて、大いに気分が萎えるも、ここを越えないと先に進めないので休憩もそこそこに登り始める。
さすがに南アルプス随一の不人気コースと言われるだけに、さきほどまでの道とはうって変わって細々とした踏み跡チックな道がまっすぐ一直線に頂上まで続いている。
最後はこれまた3点確保必須の岩登りとなりようやく1時間半がかりで栗沢山頂上。
頂上から、駒津峰(左)と魔利支天(右)を従えた甲斐駒ケ嶽(中央)の雄姿を望む。
まさに「南アルプスの白い貴公子」と呼ばれるにふさわしい、神々しいまでの美しさ。信仰の対象になるのも頷ける。
この時点でちょうど正午。
ここから本日の目的地、早川尾根小屋までは3時間のコースタイム。
さてもうひとがんばり!と次なるピーク「アサヨ峰(2,799m)」へ向けていよいよ早川尾根縦走開始!
って、これはなかなか厳しいですよ。結構なアップダウンのあるゴロゴロ大石だらけの尾根道に、午後の強い日差しが容赦なく降り注ぎ、急速に体の水分が奪われていく。
これはこまめな水分補給が必須、とハイドレーションのバルブを咥えて吸引したらなんだか「ズズズズ」という嫌な音とともに口中に水ではなく空気が流れ込んで来た。
こ、これは・・・間違いなく「水切れ」。
おいおい、この局面で水が無くなったってか?
朝、2Lたっぷり補充してきたのに?
あまりのショックにその場に座り込み数分間放心状態に。
ようやく我に返り、地図を見ながら善後策を検討。
一番近い水場は、来た道を引き返し仙水小屋もしくは北沢駒仙小屋。所要時間2時間半、ほぼ下りのみ。
次に近い水場は、このまま早川尾根を進み予定通り早川尾根小屋。所要時間3時間、かなりアップダウン。
しばし黙考。どっちにしても3時間近くかかるなら先に進むか、という結論に至り、3時間(実際には4時間近くかかったけど)の苦行開始。
食料は豊富にあるけれど、食べると喉が渇くので結局は飲まず食わずで4時間弱。
最後は20m歩いては20秒休む、みたいな感じで這うように瀕死の状態でようやく最後の小ピークに到着、あとは10分ほど下れば小屋、というところで記念(?)撮影。
完全に死んでますな。南無阿弥陀仏。
どうにかこうにか即身成仏することなくたどり着いた早川尾根小屋で、小屋番の奥さんが出してくれた冷たいお茶は天国の味。
さらにビールを買ったらエビスが出てきた!
地獄から極楽へバズーカで打ち上げられた気分。
キンキンに冷えたエビスを一気にゴクゴク飲み干してテント設営。
小屋の中は大人数の中高年グループがワイワイ賑やかだけど、テン場は私一人。
賑やかな声を遠くで聞きつつ、アルファ米とレトルトグリーンカレーの夕食を腹に収め、本を開く間もなく夢の世界に落ち込んでいたのでした。
3日目。
明け方、疲れのせいか、妙にはっきりした変な夢を見つつ3時過ぎに起床。
いつもの棒ラーメンを食い、テント畳んで出発したのは6時過ぎ。もっと早出したかったけど今日はこれが限界。
早川尾根小屋は、比較的若い(推定40代後半)、気さくで愛想の良い夫婦が経営する小さいけど心温まる良い小屋でした。感謝。
早川尾根は高嶺(この登りがまたかなりクライミング的な岩登りで緊張感バツグン)で終わり。
高嶺(2,788m)の頂上より、昨日から歩いてきた道を望む。
はるばる来たもんだ。
高嶺を過ぎるといよいよ鳳凰三山エリアへ突入。
噂どおりの白砂の道は確かに綺麗で楽しいんだけど、照りつける太陽を反射して暑い&目が痛い。
あまり長居したくない気分だったので、地蔵岳の地蔵搭(オベリスク)へは寄らずに先を急ぐ。
また今度。
鳳凰三山の真ん中、観音岳頂上より来し方を望む。
甲斐駒はもう遥か彼方。薬師岳を過ぎればこの景色はもう見えなくなる。ちょっと寂しい。
さらば甲斐駒また来る日まで(尾崎紀世彦ふうに)。
目を転じれば南アルプスの盟主、北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山が大迫力。
あっちも近いうちに行くべし。
薬師小屋を経て南御室小屋に着いたのが13時前。本当はこのテント場で停泊予定だったけど、明日は雨予報&終着点の夜叉神バス停までコースタイム3時間。17時11分の最終バスに余裕で間に合うじゃないか、ということで一気に夜叉神まで下ることに方針変更。
南御室小屋から先は林道チックなとても歩き易い道で、一気に歩き切って夜叉神峠に3時過ぎに到着、後はバス停まで40分下るだけ。
というわけでビールで一人乾杯。お疲れちゃん、俺。
きっちり40分かけてバス停まで下り、トイレで体をボディペーパーで拭いていたら、棚の上に預金通帳やらカードやらがテンコ盛りに詰まったポーチが置き忘れられているのを発見、店の人に届けるというハプニングもありつつ無事バスで甲府まで帰着、8時ちょうどのあずさ2号(ウソ)で帰宅したのでした。
キツかったけど楽しかった!
南アルプス最高!甲斐駒最高!
また行きたいな。
終り。
ずっと行ってみたかった南アルプス 甲斐駒ヶ嶽へ行ってきました。
甲斐駒へ登るルートとしては北沢峠から駒津峰を経由して行くのが現在最もポピュラーなのだけど、今回は古くからの信仰登山の道である「黒戸尾根コース」を選択。
黒戸尾根は「日本三大急登」の一つと言われ、登り口の竹宇駒ケ嶽神社から甲斐駒の頂上まで標高差2,300m。
噂によると相当キツイらしいので荷物は極力軽量化したいところではありますが、テント場の様子がよくわからない&高山での風対策を考慮し軽量900グラムのルナーソロ(ワンポール・シングルウォールテント)ではなく約2kgのダンロップVS20(ダブルウォールテント)を選択。
さらに小屋でビールを買えなかった場合を想定しワインを1L携行。3泊4日分の食料とあいまって荷物はズッシリ20kg強のライトヘビー級。
だいじょうぶか?俺・・・。
と若干の不安を抱えつつ4時44分地元駅発の電車に乗り、中央線長坂駅からタクシーで30分、登山口の尾白川渓谷駐車場に到着したのは8時半過ぎ。はるばる来たもんだ。
というわけで早速登り始めましょう。
まずは登り口に鎮座まします竹宇駒ケ嶽神社に参拝。
神社脇の尾白川渓谷にかかる吊橋を渡るといよいよ日本三大急登・黒戸尾根が始まる。
と言っても斜度はそれほど激しくキツイわけではなく、まあ普通なんだけど、それを延々2,300mも登り続けるのかと思うと愕然とするという感じ。
しばらく土の道を登り続け、視界がパっと開けたところが名所(?)“刃渡り”。
切り立った岩尾根で見た目は怖いけど、しっかり鎖の手摺が設置してあるので思いのほか危険度は低い。でも強風+雨だったらかなりヤバそうではあります。
刃渡りからしばらく急な斜面を登ると“刀利天狗”。
このあたりから道の脇に「~神」「~仏」と刻んだ大小の石碑が連綿と現れるようになる。
それらの裏には、古くは江戸時代から新しくは平成まで、様々な年号が刻まれており、いかに駒ケ嶽が古くから信仰の対象として尊崇を集めていたかがヒシヒシと伝わり、次第に厳粛な気分になってくる。
一度、足がもつれて転んだとき、高さ60cmほどの小さな石碑を倒してしまったのだけど、これを元に戻すのが汗をかくほど大変、すなわち「めちゃくちゃ重い」のである。ザックの重量なんて足元にも及ばないほどの重さの石を背負ってこの山道を登ってきた昔の人ってスゲーなー、と素直に感心する。
五合目を過ぎるといよいよ黒戸尾根の核心部、垂直のハシゴと鎖場が交互に現れる難所に突入。
ハシゴも鎖もしっかりしているのでそれほど怖くは無いけれど、20kgザックを背負って登るのはキツイ。
一気に息が上がり汗が吹き出し、持続する緊張感に写真を撮る余裕無し。
ようやく最後の橋を渡ると七丈小屋に到着。テン場が混んでいるようなので休むヒマなくテン場へ直行、最後に一箇所だけあった空きスペースにテントを設営。
いやー危ない。あともう少し遅く着いてたら張れなかったよ(*実はこのテン場の真上に第二テン場あり、そっちは空いていましたが展望がイマイチ)。
テントを張ったら後はゆっくり寛ぐのみ。
ビール、ワインと飲み進むうちにガスが晴れ、鳳凰三山がこんにちは。
明後日にはあそこまでたどり着けるかな~?などと景色を見ていると、あちjこちのテントから這い出してきた人たちが同じように感心しながら景色鑑賞を開始。
本日のテン場に集った人たちはソロが多く、皆静かで落ち着いた人ばかりでとても良い感じ。いつもこんな感じだといいなあ。
陽が落ちると甲府方面の夜景がとても綺麗で、テントの扉を空けて眺めつつ、ヘッドランプの灯りで読書をしつつワインを飲む。至福のうちに19時頃就寝。
翌朝は2時過ぎに起床。
さすがに寒いけど、外に出ると満点の星と、美しい三日月。最近山ではいつも悪天候だったので、久々の美しい夜空に感動しつつ朝飯食ってテント畳んで4時半過ぎに出発。
昔の信仰登山者がご来光を拝むための場所である「八合目御来迎場」に5時半前に到着すると、ご来光を待つ人が10人ほど。荷物を下ろして一緒に待ちます。
待つこと約15分、5時40分頃に東の空からご来光。
厳粛。荘厳。壮麗。
ごく自然に「神」を感じる瞬間です。ひとしきり撮影し、拍手を打って本日の無事を祈願して出発!
と思いきや、ここで強烈な「自然の欲求(大きいほう)」が波状的に襲来。
え~、さっき小屋のトイレでしっかり出してきたばかりなのに~(悲)。
仕方無い。普通ならちょっと脇に入って穴掘って・・・という局面だけど、この山でそれをする気にはなれず、空荷で一旦小屋まで下る。
小屋のトイレで用を足し、トンボ返りで再び御来迎場まで登ってちょうど1時間でスッキリ再出発。
ここから頂上まで1時間ちょっと、確実な3点確保必須の岩登りが続く。
二本の鉄剣がそそり立つ岩峰。
頂上直下より西峰頂上を望む。
まずは東峰に、着いたどー!
東峰から5分ほどで最高点の西峰に、着いたどー!
感動である。黒戸尾根最高!甲斐駒最高!
ひとしきり広い山頂を周遊。しかしまだまだ先は長い。15分ほどで出発、仙水峠に向けて下る。
途中、駒津峰のピークへ一旦登り返し、頂上でしばし休憩。
このあたりは北沢峠からの日帰り登山者がほとんどで、大荷物背負って反対側からやってくる私が珍しいらしく、あちこちから質問を受ける。
「黒戸尾根から来たの?」
「そうです!(ちょっと得意気)」
「その荷物背負って?」
「そうです!(かなり得意気)」
「すごいですねー。」
「いやー、それほどでも!(もっと言って!)」
的な会話を何度も繰り返し、テンション上昇。アホですな。
駒津峰から仙水峠までは膝が笑うほどの急な下り。更に、ジリジリ照り付ける太陽に炙られ、峠に降り立った頃にはかなり消耗気味。
そして目の前には早川尾根への最初の関門である栗沢山が凶悪な斜度と比高を見せ付けるようにそそり立っていて、大いに気分が萎えるも、ここを越えないと先に進めないので休憩もそこそこに登り始める。
さすがに南アルプス随一の不人気コースと言われるだけに、さきほどまでの道とはうって変わって細々とした踏み跡チックな道がまっすぐ一直線に頂上まで続いている。
最後はこれまた3点確保必須の岩登りとなりようやく1時間半がかりで栗沢山頂上。
頂上から、駒津峰(左)と魔利支天(右)を従えた甲斐駒ケ嶽(中央)の雄姿を望む。
まさに「南アルプスの白い貴公子」と呼ばれるにふさわしい、神々しいまでの美しさ。信仰の対象になるのも頷ける。
この時点でちょうど正午。
ここから本日の目的地、早川尾根小屋までは3時間のコースタイム。
さてもうひとがんばり!と次なるピーク「アサヨ峰(2,799m)」へ向けていよいよ早川尾根縦走開始!
って、これはなかなか厳しいですよ。結構なアップダウンのあるゴロゴロ大石だらけの尾根道に、午後の強い日差しが容赦なく降り注ぎ、急速に体の水分が奪われていく。
これはこまめな水分補給が必須、とハイドレーションのバルブを咥えて吸引したらなんだか「ズズズズ」という嫌な音とともに口中に水ではなく空気が流れ込んで来た。
こ、これは・・・間違いなく「水切れ」。
おいおい、この局面で水が無くなったってか?
朝、2Lたっぷり補充してきたのに?
あまりのショックにその場に座り込み数分間放心状態に。
ようやく我に返り、地図を見ながら善後策を検討。
一番近い水場は、来た道を引き返し仙水小屋もしくは北沢駒仙小屋。所要時間2時間半、ほぼ下りのみ。
次に近い水場は、このまま早川尾根を進み予定通り早川尾根小屋。所要時間3時間、かなりアップダウン。
しばし黙考。どっちにしても3時間近くかかるなら先に進むか、という結論に至り、3時間(実際には4時間近くかかったけど)の苦行開始。
食料は豊富にあるけれど、食べると喉が渇くので結局は飲まず食わずで4時間弱。
最後は20m歩いては20秒休む、みたいな感じで這うように瀕死の状態でようやく最後の小ピークに到着、あとは10分ほど下れば小屋、というところで記念(?)撮影。
完全に死んでますな。南無阿弥陀仏。
どうにかこうにか即身成仏することなくたどり着いた早川尾根小屋で、小屋番の奥さんが出してくれた冷たいお茶は天国の味。
さらにビールを買ったらエビスが出てきた!
地獄から極楽へバズーカで打ち上げられた気分。
キンキンに冷えたエビスを一気にゴクゴク飲み干してテント設営。
小屋の中は大人数の中高年グループがワイワイ賑やかだけど、テン場は私一人。
賑やかな声を遠くで聞きつつ、アルファ米とレトルトグリーンカレーの夕食を腹に収め、本を開く間もなく夢の世界に落ち込んでいたのでした。
3日目。
明け方、疲れのせいか、妙にはっきりした変な夢を見つつ3時過ぎに起床。
いつもの棒ラーメンを食い、テント畳んで出発したのは6時過ぎ。もっと早出したかったけど今日はこれが限界。
早川尾根小屋は、比較的若い(推定40代後半)、気さくで愛想の良い夫婦が経営する小さいけど心温まる良い小屋でした。感謝。
早川尾根は高嶺(この登りがまたかなりクライミング的な岩登りで緊張感バツグン)で終わり。
高嶺(2,788m)の頂上より、昨日から歩いてきた道を望む。
はるばる来たもんだ。
高嶺を過ぎるといよいよ鳳凰三山エリアへ突入。
噂どおりの白砂の道は確かに綺麗で楽しいんだけど、照りつける太陽を反射して暑い&目が痛い。
あまり長居したくない気分だったので、地蔵岳の地蔵搭(オベリスク)へは寄らずに先を急ぐ。
また今度。
鳳凰三山の真ん中、観音岳頂上より来し方を望む。
甲斐駒はもう遥か彼方。薬師岳を過ぎればこの景色はもう見えなくなる。ちょっと寂しい。
さらば甲斐駒また来る日まで(尾崎紀世彦ふうに)。
目を転じれば南アルプスの盟主、北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山が大迫力。
あっちも近いうちに行くべし。
薬師小屋を経て南御室小屋に着いたのが13時前。本当はこのテント場で停泊予定だったけど、明日は雨予報&終着点の夜叉神バス停までコースタイム3時間。17時11分の最終バスに余裕で間に合うじゃないか、ということで一気に夜叉神まで下ることに方針変更。
南御室小屋から先は林道チックなとても歩き易い道で、一気に歩き切って夜叉神峠に3時過ぎに到着、後はバス停まで40分下るだけ。
というわけでビールで一人乾杯。お疲れちゃん、俺。
きっちり40分かけてバス停まで下り、トイレで体をボディペーパーで拭いていたら、棚の上に預金通帳やらカードやらがテンコ盛りに詰まったポーチが置き忘れられているのを発見、店の人に届けるというハプニングもありつつ無事バスで甲府まで帰着、8時ちょうどのあずさ2号(ウソ)で帰宅したのでした。
キツかったけど楽しかった!
南アルプス最高!甲斐駒最高!
また行きたいな。
終り。
by namifujisan
| 2013-10-05 13:08
| 山